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今後の職場のハラスメント対策について

~カスタマーハラスメント、就活ハラスメント対策も重要~

 

厚生労働省は、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、集中的な広報・啓発活動を実施しています。

資料として「職場のハラスメント対策」だけでなく「カスタマーハラスメント対策」、「就活ハラスメント対策」が作成されています。法制化されているセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産等、育児休業等に関するハラスメントだけでなく、昨今注目されているカスタマーハラスメントや就活ハラスメントについても企業として対策が求められていることがうかがえます。

 

セクハラ等は、男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、育児介護休業法により会社が行うべき雇用管理上の必要な措置などが義務化されていますが、カスタマーハラスメントや就活ハラスメントについては、現状、各法律の指針で望ましい取組が示されています。対策は法律や指針をもとに進めていくのがよいでしょう。

 

<職場におけるハラスメント防止対策の強化>

労働政策審議会雇用環境・均等分科会にて下記のとおり職場におけるハラスメント防止対策の強化が議論されており、各ハラスメントに対する雇用管理上の措置義務が今後、法制化されることも考えられます。

※以下、第76回労働政策審議会資料1「女性活躍推進及び職場におけるハラスメント対策についての論点」より抜粋

(1)職場におけるハラスメントは許されるものではない旨の明確化

ハラスメント対策に総合的に取り組んでいく必要があることから、雇用管理上の措置義務が規定されている4種類のハラスメントに係る規定とは別に、一般に職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨の規定を法律に設けることとしてはどうか。

(2)顧客、取引先等からの著しい迷惑行為等(カスタマーハラスメント)対策の強化

① 雇用管理上の措置義務の創設

カスタマーハラスメントは労働者の就業環境を害するものであり、労働者を保護する必要があることから、カスタマーハラスメント対策について、事業主の雇用管理上の措置義務とすることとしてはどうか。

② カスタマーハラスメントの定義

「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会報告書」(令和6年8月8日)において示されている考え方を踏まえ、以下の3つの要素をいずれも満たすものとし、それぞれについて以下に掲げる事項を指針等で示すこととしてはどうか。

ⅰ.顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと。

ⅱ.社会通念上相当な範囲を超えた言動であること。

ⅲ.労働者の就業環境が害されること。

(3)就活等セクシュアルハラスメント対策の強化

① 雇用管理上の措置義務の創設

就職活動中の学生をはじめとする求職者に対するセクシュアルハラスメントの防止を、職場における雇用管理の延長として捉えた上で、事業主の雇用管理上の措置義務とすることとしてはどうか。

② 求職者に対する情報公表の促進

昨今の就職活動のあり方は多様であるため、①に基づき事業主が講ずる雇用管理上の措置の内容もそれに応じて多様なものとなることが想定されるところ、その内容を求職者に対して積極的に公表することは、セクシュアルハラスメント防止に資するものであり、また、職業生活を営もうとする女性の職業選択に資するものでもあることから、措置の内容を公表していることをプラチナえるぼし認定の要件に位置づけることとしてはどうか。

(4)いわゆる「自爆営業」についての考え方の明確化

いわゆる「自爆営業」に関して、職場におけるパワーハラスメントの3要件を満たす場合にはパワーハラスメントに該当することについて、パワーハラスメント防止指針に明記することとしてはどうか。

※「自爆営業」とは、使用者が、労働者に対し、当該労働者の自由な意思に反して当該使用者の商品・サービスを購入させること

 

職場のハラスメント対策は職場環境の向上、社員の意欲やエンゲージメントの向上につながり労使双方にメリットがあります。また、採用や社員の定着率に悪影響を与えることも考えられますので、法制化されているハラスメントだけでなく、カスタマーハラスメント、就活ハラスメントやいわゆる自爆営業についても対策を進めていくことが重要です。

 

12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です|厚生労働省

第76回労働政策審議会雇用環境・均等分科会|厚生労働省

執筆者  谷町 ハジメ(ペンネーム)

大学卒業後、服飾雑貨の販売に従事。労務管理に興味を持ち社労士試験に挑戦。
平成16年に社労士資格取得。その後、約20年にわたり、人事・労務管理の業務に携わっている。