~今後の労働安全衛生対策について~
厚生労働省の労働政策審議会が1月17日に今後の労働安全衛生対策について建議し、その内容が公表されました。
厚生労働省は、この建議の内容を踏まえて法律案を作成し諸手続きを進めていく予定ですので内容を確認しておきましょう。
1.建議の概要
- 個人事業者等に対する安全衛生対策の推進
- 職場のメンタルヘルス対策の推進
- 化学物質による健康障害防止対策等の推進
- 機械等による労働災害の防止の促進等
- 高年齢労働者の労働災害防止の推進
- 一般健康診断の検査項目等の検討
- 治療と仕事の両立支援対策の推進
2.50人未満の事業場にストレスチェック義務化
現在、労働者数50人未満の事業場においてはストレスチェックの実施が当分の間、努力義務となっていますが、「事業場規模にかかわらずストレスチェックの実施を義務とすることが適当である」と建議されています。背景には、精神障害の労災支給決定件数が令和5年度に883件と過去最多となったことやメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業又は退職した労働者がいる事業場の割合が近年上昇傾向で1割を超えて推移している状況があります。
メンタルヘルス不調による休業や退職は、当事者だけでなく人手不足、採用難の状況に苦しむ経営に大きなダメージを与えますので、ストレスチェックを実施しメンタルヘルス不調を未然に防ぐことは重要です。ストレスチェック未実施の企業は検討をはじめておいてもよいのではないでしょうか。
施行時期に関し建議では、「50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保することが適当である」としています。
3.高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善等の措置の努力義務化
建議では、「高年齢労働者の労働災害を防止するため、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、適切な作業の管理その他の必要な措置を講じることを事業者の努力義務とすることが適当である」としています。背景には、高年齢労働者の労働災害発生率が若年世代と比べて高く、災害が起きた際の休業期間も長い傾向にあること、また高年齢労働者の労働災害は加齢による身体機能の低下等の高年齢労働者の特性が原因の一つと考えられるという事情があります。
厚生労働省の令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果によると65歳までの高年齢者の雇用確保措置は、ほぼ100%実施済みであり定年の引上げにより実施している企業は28.7%と前年に比べ1.8%増加しています。また、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は31.9%と前年に比べ2.2%増加しています。人手不足、採用難対策も相まって高年齢者の積極的な活用が進み今後も高年齢労働者の割合は高まっていくことが予想されます。(令和5年の労働者全体に占める60歳以上の割合は18.7%)
今後、高年齢労働者の労働災害防止対策の重要性は増していきますので加齢による身体機能の低下等の高年齢労働者の特性も踏まえ労働災害防止対策を進めていくことが求められます。
以 上