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令和4年職業安定法の改正について ~職業紹介事業者の皆様へ~

職業安定法とは、労働市場におけるルールを定めた法律で、昭和22年に制定されました。この法律は、主に「職業紹介」「労働者募集」「労働者供給」について規定されています。令和4年10月1日から、「インターネットを活用した就職活動の普及に伴い、Web上の求人サービス等を対象にしたルールを明確にすることで求職者が安心して求職活動をできるよう環境の整備と、マッチング機能の向上」を目的として「労働者募集」等に関するルールが改正されます。このコラムでは、職業紹介事業者の皆様向けに改正部分の要点を記載しますので、是非ご一読ください。

厚生労働省 出典  https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000984586.pdf

1.求人等に関する情報の的確な表示の義務付け 

※下記の①から⑤の情報すべてが対象となります。

① 求人情報求人募集の広告のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

② 自社に関する情報

③ 求職者情報

④ 求人企業に関する情報

⑤ 事業の実績に関する情報

【的確な表示】とは

♦ 虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしないこと

♦ 求人情報、求職者情報を正確・最新の内容に保つ措置を講じること

【対象となる情報】

広告や連絡手段を通じで提供される求人情報・求職者情報が幅広く対象となります。

→新聞・雑誌・その他刊行物に掲載する広告、文書の掲出・頒布、書面、ファックス、ウェブサイト、電子メール・メッセージアプリ・アプリ等、放送(テレビ・ラジオ等)、オンデマンド放送等

※求人の労働条件を特定の求職者に明示する前に、ウェブサイト等を通じて求職者に提供する求人情報が対象となることに注意が必要です。募集を始める段階の情報アップ時若しくは掲示する際に、曖昧な情報ではなく的確な情報を提供することが必要となります。

【正確かつ最新の内容に保つ措置】

求人情報・求職者情報を正確かつ最新の内容に保つため、以下の措置を講じなければなりません。

いずれも講ずる必要がある措置

① 求人情報・求職者情報の提供中止や訂正を求められたら、遅滞なく対応する。

② 求人情報・求職者情報が正確・最新の内容でないことを確認したら、遅滞なく情報提供依頼者に訂正があるかを確認するか、情報の提供を中止する。

いずれかを講ずる必要がある措置

① 求人者・求職者に定期的に求人情報・求職者情報が最新かどうか確認する。

または

② 求人情報・求職者情報の時点を明らかにする。

※なお、これらの措置は可能な限りいずれも講ずることが望ましいとされています。

上記の「定期的に求人情報・求職者情報が最新かどうか確認する」措置については、厚生労働省のQ&A問2―11には、どの程度の頻度で収集・更新すればいいのか?という質問に対する回答として、「特段の定めはないが、情報の内容に変更があったにもかかわらず、更新がなされていないままの状態が続くことがないよう、一定の期間を設けて確認する必要がある」とされています。また、「求人又は求職の申込みを受理した日を示すことで、求人等に関する情報の時点を明らかにする措置を講じていることとなる」と記載されていますので、詳細は厚生労働省のQ&Aを参考にしてください。

厚生労働省 出典 改正職業安定法Q&A  https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000965559.pdf

【虚偽の表示】とは

職業紹介による就職件数や、提供している募集情報の件数等の事業の実績について、意図して、実際よりも多いかのように広告する等、事実と異なる表示をした場合には、虚偽の表示に該当します。また、求人情報を提供するときに意図してその情報と実際の労働条件を入れ替えた場合や受理していない求人を紹介できると広告した場合には、虚偽の表示に該当します。

<虚偽の表示の具体例>

① 職業紹介事業に関しては、具体的に以下のような表示があげられます。

  • 実際の取扱い求人件数が1000件程度のところを、1万件程度あると表示する
  • 実際には掲載されたことのない求人を表示して広告する

 

② 求人情報に関しては、具体的に以下のような表示があげられます。

  • 実際に求人を行う企業と別の企業の名前で求人を掲載する
  • 「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイト・パート」の募集であった場合
  • 実際の給与よりも高額な給与である「基本給○万円」といった内容で求人募集の掲載をする
  • 実際には採用予定がなく、紹介のできない「おとり求人」を掲載する

 

【誤解を生じさせる表示】とは

必ずしも虚偽の表示に該当しない表示であっても、実際よりも著しく優良であるかのように表示した場合や、利用者が正しく理解することが困難な表示をした場合には、誤解を生じさせる表示に該当することがあるので、注意が必要です。

<誤解を生じさせる表示の具体例>

① 職業紹介事業に関しては、具体的に以下のような表示があげられます。

  • 全く根拠なく顧客満足度が高い旨を表示する
  • 様々な仮定を置いた上で就職決定率を算出・表示しているが、当該仮定に ついて表示していない又は非常に見えにくい状態にしている

 

② 求人情報に関しては、具体的に以下のような表示があげられます。

  • 関係会社・グループ企業が存在している企業が募集を行う場合に、実際に雇用する予定の企業と関係会社・グループ企業が混同されるような表示をしている

(例)優れた製品開発実績を持つグループ会社の実績を大きく記載し、あたかもその求人企業の実績であるかのように表示する

  • 雇用契約を前提とした労働者の募集と、フリーランス等の請負契約の受注者の募集が混同されるような表示をしている

(例)業務委託契約の案件であることを明示せず、労働者の募集と同じ表示をする

  • 月給・時間給等の賃金形態、基本給、定額の手当、通勤手当、昇給、固定残業代等の賃金等について、実際よりも高額であるかのように表示をしている

(例)社内で給与の高い労働者の基本給を例示し、全ての労働者の基本給であるかのように表示する

(例)固定残業代について基礎となる労働時間数等を明示せず、基本給に含めて表示する

  • 職種や業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いて表示をしている

(例)営業職が中心の業務について事務職と表示する

特に賃金で「固定残業代」を採用する企業におきましては、基礎となる労働時間数等を明示せず、基本給に含めて表示してはならないので注意が必要です。

<不適切な表示例>

【月給】32万円

<適切な表示例>

【基本給】25万円 【固定残業代】7万円

※ 時間外労働の有無に関わらず、15時間分支給。15時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給します。

 

2.個人情報の取扱いに関する新ルール 

求職者の個人情報を収集する際には、業務の目的を明らかにしなくてはなりません。

【業務の目的の明示】

求職者の個人情報を収集する際には、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に、 個人情報を収集・使用・保管する業務の目的を、ウェブサイトに掲載するなどして、明らかにしなくてはなりません。

<不適切な表示例>

  • 「職業紹介のために使用します。」とのみ表示

 

<適切な表示例>

  • 「職業紹介で応募を希望する求人先に応募情報を提供する際に使用します」と表示
  • 「求人情報に関するメールマガジンを配信するために使用します」と表示
  • 「職業紹介で求職者に開示の許諾を得た業務提携先に提供する際に使用します」と表示

 

3.求人メディア等についての届出制の創設

従来の求人メディア・求人情報誌だけでなく、以下の事業を行う事業者も職業安定法の「募 集情報等提供事業者」になりました。

  • インターネット上の公開情報等から収集(クローリング)した求人情報・求職者情報を提 供するサービス
  • 求人企業や求職者だけでなく、職業紹介事業者や他の求人メディア等(募集情報等提供事 業者)から求人情報・求職者情報の提供依頼を受けたり、情報提供先にするサービス

 

【特定募集情報等提供事業者の届出】

特定募集情報等提供事業者(求職者に関する情報を収集する募集情報等提供事業者)に、届出制が導入されます。

<届出が「必要」な例>

  • 会員登録を求めている場合
  • メールアドレスを集めて配信している場合
  • 閲覧履歴に基づく情報提供をしている場合

 

<届出が「不要」な例>

  • 紙媒体でのみ情報提供している場合

職業紹介事業の一環として、受理した求人の情報を、ウェブ等を通じて提供し、求職者が直接求人者に連絡・応募できないような場合は、特定募集情報等提供の届出は不要です。

以上が、令和4年10月に改正される職業安定法の概要となります。今回の的確な表示等についても従来は指針で示されていたものが法令に格上げになり義務化されましたので、求人票や求人広告等を再確認して、的確な表示がなされているかについて見直してください。また、職業紹介事業者の皆様向けのコラムを書いてきましたが、募集情報等提供者事業向けや求人企業向けおよび求人者向けにも厚生労働省のHPにリーフレットがありますので、そちらも是非ご参考にして頂き、今後の運用に役立てて頂ければと思います。