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2021年4月から「パートタイム・有期雇用労働法」の適用を受ける中小企業について

前回のコラムでは、「行政ADRの根拠規定の整備と企業の対応について」解説しました。

これは2020年4月1日に改正された「パートタイム・有期雇用労働法」や「労働者派遣法」に関連して整備されたことを説明しましたが、「パートタイム・有期雇用労働法」に関しては、中小企業における適用を1年先の来年2021年4月1日としています。

自社が大企業なのか、中小企業なのかはほとんどの企業の方がご存じではありますが、時々、「当社は中小企業なのか大企業なのか?」といった問合せを受けることもありますので、今回はその対象となる中小企業についての定義について説明します。

 

先ず、「大企業」ついて考えてみましょう。

「大企業」=「上場企業」であるとか、「有名企業」「大手企業」をイメージすることが多いかと思いますが、誰もが知っているような知名度の高い企業でも上場していないことも多く、上場企業は全体の1%未満といわれています。そもそも「大企業」といった定義はありません。

中小企業基本法において、中小企業と小規模企業が業種ごとに定義されているので、大企業はそれ以外と考えれば良いと思います

 

中小企業基本法で定義されていることは主に2つあります。

そのうちの一つが従業員の数です。従業員の数で定義する場合は、「常時使用する従業員数」となっています。中小企業基本法上の「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「解雇の予告を必要とする者」を従業員と解しています。つまり、日日雇入れられる者等労働基準法第21条に規定される労働者は含まれません。また、非正規社員については労働基準法第20条をもとに個別に判断されることとなります。

 

次に、もう一つの判断基準とされているのが、企業の規模を知る上で最も重要なもの、それが資本金の額もしくは出資の総額です。こちらは、基本的には3億円以下と定められていますが、従業員数と同様に業種によって1億円以下や5千万円以下など、基準が下がっています。資本金の額ないし出資の総額、もしくは在籍している従業員の数どちらかを満たしている場合、中小企業と位置づけられています。

 

中小企業を明確にし、分類するのは、国の中小企業に対する政策の適用範囲を定めるためです。具体的には、法人税法における中小企業減税率や各省庁や地方公共団体からの補助金・助成金などが挙げられます。

 

業種によって資本や従業員数がバラバラなのは、製造業の場合はそれなりの設備と資本が必要であるのに対し、サービス業の場合は比較的低資本で始められたりする等、差があり業種による実態を考慮しています。表にまとめると下記の通りとなります。

 

中小企業(うち小規模企業者)の定義

中小企業 うち小規模企業者
業種 資本金 または 従業員数 従業員数
製造業・その他 3億円以下または300人以下 20人以下
卸売業 1億円以下または100人以下 5人以下
サービス業 5,000万円以下または 100人以下 5人以下
小売業 5,000万円以下または 50人以下 5人以下

 

「パートタイム・有期雇用労働法」等の適用について大企業は2020年4月からでしたが、中小企業には2021年4月からという猶予を持たせているのも、法の適用により人件費や経費が増加し、経営への影響が大きいと考えられるための国の施策です。

中小企業の適用まで後数ヶ月の猶予しかありませんが、残された期間を有効に活用していただくことと、4月以降も必要に応じて見直しを継続していくことが肝要と思います。