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労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」の例外的取扱いについて

派遣社員の賃金は労使協定方式を採用する場合、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」と同等以上であることが要件となっています。令和2年10月20日付で、令和3年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30 条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する 一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について、局長通達が発表されました。

発表されて1ヶ月以上経過していますが、12月に入りこの局長通達に関する問合せが増えていますので、改めてその内容について解説をします。

 

先ず、令和2年度の局長通達との大きな違いは、「現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱い」が記載されていることです。

これは、新型コロナウイルス感染拡大によって、派遣の契約が更新されない、予定されていた派遣契約が頓挫する等派遣事業の運営、活動に影響を与え、派遣社員の解雇を余儀なくされるような事態が生じることを懸念し次のような例外的取扱いを定めたものです。本来は「令和元年(度)の統計調査等」に基づき賃金を算出するのですが、一定の要件を満たせば、「平成30年(度)の統計調査等」を用いることができるとしたことです。

 

賃金構造統計調査も職業安定業務統計も前前年のデータを使用していることから、令和3年の平均的な賃金額は、令和2年度よりも基準値の水準は概ね上昇しています。

0年である基準値と1年目を採用している場合は、明らかに賃金が上昇することになり、新型コロナウイルス感染拡大によって事業運営に影響を受けている会社にとっては、この賃金上昇によるインパクトは大きいと考えられます。今回の例外的取扱いは、そういった影響に対する配慮だといえます。

では、その一定要件ですが、局長通達では以下①~④を全ての要件を満たす場合に限りとされています。

 

  • 派遣労働者の雇用維持・確保を図ることを目的とするものであって、その旨を労使協定に明記すること。
  • 労使協定を締結した事業所及び当該事業所の特定の職種・地域において、労使協定締結時点で新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、事業活動を示す指標(職種・地域別)が現に影響を受けており、かつ、当該影響が今後も見込まれるものであること等を具体的に示し、労使で十分に議論を行うこと。
  • 労使協定に、一般賃金の額「平成30年(度)の統計調査等」 を適用する旨、及びその理由を明確に記載していること。理由については、①の目的、及び②の要件で検討した指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・抽象的な理由のみでは認められないこと。
  • ①の要件に係る派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応策、②の要件に該当する根拠書類、例外的取扱いの対象労働者数等を、事業報告書提出時(令和3年度及び令和4年度)に都道府県労働局に提出すること。

 

要件②にある派遣会社における事業活動を示す指標ですが、局長通達では、「労働者派遣契約数が、令和2年1月 24 日以降、継続的に減少していること」等の例を挙げています。

ただこれはあくまで例示であり、事業活動を示す指標は派遣会社によって様々です。例えば、派遣契約件数、新規派遣契約件数、派遣稼働者数、派遣稼働率、派遣契約決定数、派遣契約決定率等色々な指標が考えられますが、コロナの影響を受けたことを示す数値、データであればどの指標でもよいようです。

また、局長通達には「継続的に減少していること」とありますが、例えば、前月対比で毎月数値が減少していなければならないというものではなく、月によってバラツキが生じていても全体的に減少傾向にあり、今後もそれが予想されるといったものであればよいということです。

雇用調整助成金の特例措置による申請を行った会社であれば、それが一番明確な指標になりますが、申請をされていない会社でも、労働者代表との話し合いで十分に説明ができて合意が得られる指標等があればそれを活用されればよいと思います。

 

来年の4月から適用される労使協定に向けての準備、特に労働者代表と協議し合意すること、その協議した内容を記録すること、その上で労使協定を作成することが重要なことだと思います。