新たに人を採用する際には、身元保証人を立てて、身元保証書を提出させることがあります。通常のケースでは、会社が身元保証人をお願いする趣旨は、「万が一従業員が入社後に何らかのトラブルを起こして会社が損害を受け、会社として賠償を請求したいと考えた場合に、労働者本人に十分な資力がなくても賠償してもらえるようにするためといえます。
2020年4月1日の改正民法施行に伴い、従業員の身元保証人と結ぶ身元保証書において、保証額の限度設定が必要となりました。これまで、身元保証書の内容に保証額の記載がなかった場合でも、身元保証人は連帯して責任を負わなければなりませんでしたが、今後は限度額が定められていない場合、身元保証人との身元保証契約が無効となってしまいます。
入社時に必ず身元保証人を定めなくてはならないものではありませんので、会社によって運用等は異なり、金銭や商品を直接取扱う従業員に対してのみ定める会社もあります。
また、身元保証人は必ずしも親族である必要はなく、また複数名を指定することも可能です。
2020年4月1日以降に締結する契約(提出する身元保証書)から、定めた限度額の範囲で、身元保証人は賠償責任を負いますが、限度額をどれくらいにすればよいかということが実務上の課題かと思います。
あまりに低額な限度額を定めたくはないと思いますが、あまりに高額にしてしまうと、本人からの入社辞退や身元保証人が保証をすることに躊躇して手続きが進まない、会社にネガティブな感情を持つなどの悪い影響が出るかもしれません。
そこで、一つの考え方ですが、「従業員の月給の〇か月分」を限度額として定めるということが考えられます。試用期間の3ヶ月から6ヶ月の賃金を限度額として定めることは適切ではないかと思います。
身元保証人が保証責任を負う期間は、身元保証契約で期間を設定しなかった場合は3年、期間を設定した場合でも5年が最長となり、5年を超える定めをしても5年に引き下げられます。また、自動更新はできませんので、必要な場合は新たな契約の締結が必要となります。