令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況からみる労務管理
~あっせん申請件数は、「解雇」が最多~
「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」が先日公表されましたので、「個別労働紛争解決制度」の3つの方法(「総合労働相談」、都道府県労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」)ごとに争いごとを見ていくことで、労務管理の注意点を考えたいと思います。
1.個別労働関係紛争相談件数
「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が、14年連続最多。ハラスメントという言葉は定着し、労務管理でも最大の課題となっている昨今、この結果にあまり驚きはないのかもしれません。
件数は、55,614件と前年度に比べ1.1%増加しています。この件数にはパワーハラスメントは含まれていないにもかかわらず、この結果ですのでいかに労務管理上、対策が必要であるかがわかります。
10月からは、カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります。厚生労働省が公表した「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」では就業規則の規定例やハラスメント相談窓口の案内文例なども掲載されていますので参考にして対策を進めていきましょう。
2.労働局長による「助言・指導」
「労働条件の引き下げ」の助言・指導の申出は、1,220件で前年度に比べ10.6%増加しています。
1日の所定労働時間を8時間から5時間に引き下げると会社から話があったが同意できないと伝えたものの会社は話し合いにも応じない状況のため、今のままの労働条件で勤務したいとして助言・指導を申し出たケースが紹介されています。このケースでは、労働局は所定労働時間などの労働契約の内容については労働者の合意なく一方的に変更することはできないことを説明し、法令等に沿った解決に向けて話し合うよう助言しています。
労働契約法では、労働条件の引き下げには労働者の合意が必要であると規定されています。労働条件の引き下げが必要となった場合は、労働契約法に基づき労働者の合意を得るため激変緩和措置を設けるなど不利益の軽減などの検討も行いましょう。
3.紛争調整委員会による「あっせん」
都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度を「あっせん」といいます。紛争当事者一方または双方からのあっせん申請により開始されますが、紛争当事者の一方が不参加の場合は、打ち切りとなってしまいます。あっせん申請された50%前後の案件であっせんが開催され、その合意率は60%前後となっています。あっせんに費用はかからず、短期間で終了するため当事者同士での話し合いで決着がつかない場合は、あっせんの制度を利用し解決を図るのも選択肢の一つです。
「解雇」のあっせん申請は、892件で前年度に比べ12.6%増加しています。相談件数では4位と年々順位を落としているものの、あっせんでは1位と深刻な労使紛争であることに違いはありません。申請人(短時間労働者)は、解雇予告を受け一定期間後に解雇された。会社から解雇理由について「申請人の仕事ぶりについて、同僚の職員からクレームが入った」との説明を受け会社に対して具体的にどのような点が問題であったのか尋ねたが、十分な説明がなかったため申出人は、不当な解雇であるので3か月分の賃金相当額として20万円の支払いを求めたケースが紹介されています。このケースでは、あっせん委員が双方譲歩可能な解決策を調整した結果、解決金として10万円を支払うことで合意しています。
労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。解雇する際は客観的に合理的な理由であるかの検討やその理由の証拠を残すなど準備が必要です。また、解雇ではなく退職勧奨による合意退職などの選択肢を検討することも選択肢の一つです。
出典:
「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します|厚生労働省
以 上