派遣を熟知している社労士事務所が顧問になる意義とは?
派遣法は1986年に施行された法律で、歴史はまだ浅いといえます。しかしながら、派遣対象業務は13業務からスタートし、16業務へ、さらに26業務へと拡大、そして禁止業務を除く全ての業務へ拡大する等規制緩和は猛スピードで進んでいった感があります。
対象業務が拡大する一方で、期間制限の考え方も変化していきました。また、2012年には規制強化の波が押し寄せ、日雇派遣の原則禁止等派遣ビジネスに逆風が吹いたかと思うと、その3年後には派遣対象業務や期間制限の考え方が抜本的に改正される等派遣という制度はこの四半世紀で著しく変化していきました。そして現行法においては、派遣独自の同一労働同一賃金が導入され、賃金の決め方にまである一定のルールが敷かれることになりました。
派遣事業は許可制であることを踏まえ、派遣各社ともコンプライアンス経営は当然という時代です。従って、事業停止命令や許可の取消し等の行政処分を受けることのないように既存事業の運営や新規事業の開始に当たってコンプライアンス上の問題や課題について相談できる専門家を必要としています。そこで専門家として候補に挙がってくるのが社労士事務所です。
ただ、社労士事務所全てが派遣を熟知しているわけではありません。前述したとおり、派遣法は四半世紀で著しく変化しており、その変化に迅速に対応しなければなりません。また、法改正によってシステムの改修や業務フローの見直し等を余儀なくされることもあり、実務にも大きく影響がでてきます。つまり、専門家として求められるのは、法令だけでなく、派遣ビジネスの実務を理解し、実務を通じた運用や法解釈ができるか否かであり、そこが派遣を熟知しているか否かの境目になるといえます。派遣法等労働法の基礎知識をベースとし、営業・登録・マッチング・派遣スタッフフォロー等の派遣ビジネスを実務として経験し、派遣スタッフや派遣先とのトラブル対応、労働局や労働基準監督署との対応等の経験を有した者と机上で派遣法を学び、社労士という業務を通じて派遣を理解していった者とでは実務的な解釈とその運用、迅速な判断・対応等スピード感や対応内容に大きな差が生じてきます。
では、派遣を熟知した社労士事務所とそうでない事務所の違いは、スピード感や対応内容といった差だけなのでしょうか。一つの例を挙げてみます。
新規で派遣事業許可を取得され、その会社が今後派遣事業を行っていく場合に必要な業務は山ほどあります。例えば、36協定、就業規則、賃金規程等の作成・届出、労働条件の明示や就業条件の明示、労働者派遣契約書の締結、派遣元管理台帳の作成等労働基準法や派遣法に準じた法定書類、帳票類等、これらを整備するだけでも相当量があります。さらには、募集、登録・採用、マッチング、評価、派遣先開拓、派遣労働者のフォロー等派遣ビジネス特有の業務もあり、派遣事業を運営していく上では許可を取得してからのほうが圧倒的に難易度も高く大変です。
他方、派遣許可申請代行業務等を得意とされている社労士事務所は多くありますし、許可の取得に伴って法定帳票類のひな型の提供やチェック、派遣労働者就業規則の作成等を行っている事務所はいくらでも存在します。ただ、派遣ビジネスの実務に関するアドバイスや実務的な書類(登録シート、ヒアリングシート等)の作成サポート、業務フロー設計や派遣社員の評価制度の構築、従業員向けの実務研修までを総合的に行えるのは、派遣を熟知している社労士事務所だけです。派遣会社が存続していくいためには、事業許可の継続(コンプライアンスの維持・向上)、派遣スタッフや派遣先の確保(サービス品質の維持・向上)、従業員の確保(従業員のモチベーションの維持・向上)等は必要不可欠なテーマだと言えます。そして、それを実現できるのが派遣実務の総合的なコンサルティングを提供できる社労士事務所であり、「派遣を熟知した社労士事務所が顧問となる意義」であると考えます。