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令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況について

令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況が公表されました

~「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が12年連続最多~

 2024年7月12日に厚生労働省より「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。

「個別労働紛争解決制度」とは、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、迅速に解決を図るための制度です。この制度では①総合労働相談、②都道府県労働局長による「助言・指導」、③紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法により労働紛争の解決が図られています。

※あっせんとは、弁護士や大学教授など労働問題の専門家であるあっせん委員が、紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより紛争の解決を図る制度です。

出典:厚生労働省_令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況

上記グラフは、過去10年間の主な相談内容別の件数推移ですが、一番多いのは「いじめ・嫌がらせ」に関する相談で年間60,113件、12年連続最多です。

この結果を見てパワーハラスメントが多いのだろうと感じる方も多いかと思います。しかし、この「いじめ・嫌がらせ」にはパワーハラスメントに関する相談は含まれていません。これは令和4年4月の改正労働施策総合推進法(職場におけるパワーハラスメント防止措置の義務化)の全面施行に伴い令和4年度以降パワーハラスメントは別途集計することとなったためですが、パワーハラスメントを含まないにもかかわらず他の相談内容に比べて突出しています。

ちなみに、令和5年度のパワーハラスメントの相談件数は60,053件です。件数が大変多く会社としては、引き続き対策をしていかなければならない問題であることがわかります。

では「いじめ・嫌がらせ」とは、どのような事案なのか事例を見てみましょう。

事例① 申請人(正社員)は、同僚から人格を否定する悪口を言われたり、他の同僚に申請人の悪口を言い、また逆に他の同僚の悪口を申請人に聞かせるなど、職場内の人間関係を悪化させる言動があり、上司に相談したが対応がなされなかった。

事例② 申請人(正社員)は、同僚からの無視や攻撃的な言動を受けたことにより、体調を崩し、通院、服薬するようになった。ハラスメント委員への相談や、事業主への自己申告及び面談を行ったが、状況は改善されなかった。

上司・部下のような縦の人間関係だけでなく、同僚間などの横の人間関係にも会社は注意を払い対処する必要があることがわかります。

相談件数の2番目以降は、自己都合退職、解雇、労働条件の引き下げ、退職勧奨と続きます。順位の変動はあまりありませんが平成28年度に自己都合退職が解雇を抜き、その後、差が広がっているのが特徴的です。

退職代行業者を通じた退職が増加していることからもわかるように、人手不足や従業員の意識の変化などの要因が相まって増えていると考えられますので退職時の対応についても注意が必要です。

 

各都道府県労働局で対応された労働紛争の事例やトラブルの発生傾向を把握しておくことでトラブルを未然に防ぐことができたり、実際に起こってしまったとしてもスムーズに対応できることもありますので、公表内容を確認し自社の労務管理に役立てていただきたいと思います。

個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

執筆者  谷町 ハジメ(ペンネーム)

大学卒業後、服飾雑貨の販売に従事。労務管理に興味を持ち社労士試験に挑戦。
平成16年に社労士資格取得。その後、約20年にわたり、人事・労務管理の業務に携わっている。