新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、今後の景気がどうなるか皆様が不安に感じていると思います。今回は景気動向を判断する指標の1つである「有効求人倍率」について、ご説明いたします。
有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合を示す数値で、「就職のしやすさ」の目安になる指標です。
例えば、求職者100人に対して求人が150件あるときは、有効求人倍率は1.5倍となります。
人手不足で多くの企業が積極的に求人募集をしているときには、有効求人倍率は1.0倍を上回ることになり、数値が大きいほど「就職がしやすい」傾向にあることを意味します。
反対に、人員が余剰傾向で企業があまり求人募集をしないときには、有効求人倍率は1.0倍を下回ることになり、数値が小さいほど「就職がし難い」傾向となります。
有効求人倍率は、景気とほぼ一致して動くため、景気の動向を知るための指標にもなります。
2019年1月時点の有効求人倍率は1.63倍で、2009年以来、右肩上がりに上昇しています。
2008年に0.77倍であった有効求人倍率は、翌2009年のリーマンショックをきっかけに大きく下落し、結果0.5倍を割り込みますが、その後は労働需要の高まりや労働人口の減少を背景に回復を続け、右肩上がりに上昇しています。
2014年には1.0倍を超え、2018年の平均値はバブル期のピークを上回る1.61倍となりました。
しかしながら今年5月29日に厚生労働省が発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍となっています。これは2016年9月以来3年半ぶりの水準となり、新型コロナウイルスの感染拡大で企業の経営が悪化したことが要因であります。また、今年3月の有効求人倍率は2005年2月に就業地別での調査を開始してから初めて全ての都道府県で有効求人倍率が低下しました。
求人倍率や求人数、求職者数の前につく「有効」とは、「ハローワークでの求人数や求職者数が有効期間内にあること」を意味しています。有効期間とは、その数値が確かだと認められる期間の目安です。
ハローワークでは、求人、求職とも、「有効期間は2ヶ月間(翌々月の末日まで)」と定められています。有効求人倍率は、算出をする時点で有効期間内にある求人数、求職者数をもとに算出されるため、有効求人倍率は、算出をする時点で実際に求人を出している企業、求職をしている人の動向を知ることができる指標となっています。
ただし、有効求人倍率には、注意しなければならない点があります。
まず1点目ですが、有効求人倍率は、ハローワーク以外での求人・求職が含まれないことです。有効求人倍率は、厚生労働省がハローワークでの求人数・求職者数をもとに算出したもので、就職雑誌やネットなどハローワーク以外で募集される転職・新卒者の求人は反映されていません。そのため、有効求人倍率が本当に全体の「就職のしやすさ」を表しているものとも言い切れない部分があります。
2点目は、求人が正社員に限られていないということです。
有効求人倍率を算出する際には、正規と非正規の求人は区別されておらず、パート・アルバイトや派遣、契約社員など、すべての求人が含まれています。また、逆に個人委託などの形態での募集も含まれていません。
したがって、有効求人倍率が正確に景気の動向を示すものであるとは言い切れない部分もあります。