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新派遣制度の幕開けに伴うリスク

2020年4月1日、改正派遣法が施行されました。
この改正派遣法により派遣社員の待遇は、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の2つの待遇決定方式を適用することとなりました。
政令26業務でしか派遣できなかった「ポジティブリスト方式」から、禁止業務を除き原則自由に派遣ができるといった「ネガティブリスト方式」に大きく変貌を遂げた1999年(平成11年)の改正以来の抜本的改正となります。
派遣社員の待遇改善を目的とした新制度ですが、派遣社員における「同一労働同一賃金」は派遣元企業、派遣先企業が制度を運用する上でとても難しいものとなっているという印象を受けます。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で少し影を潜めていた感がありますので、今回は改正派遣法について振り返りとして、派遣元企業が特に注意しなければいけないポイントを解説します。

今回の法改正で特に注意しなければいけないのは以下の2点と考えます。
1.派遣から請負に切り替えた場合に適正な請負となっているか。(「偽装請負」になっていないか)
2.派遣先均等・均衡方式選択で生じる不適切な情報提供が行われていないか。

先ず、1点目について説明します。
派遣法が改正になると多くの派遣会社で「請負契約」「業務委託契約」へ移行できないか検討をされるかと思います。しかしながら、この「請負契約」「業務委託契約」への移行は非常にハードルが高いと考えます。そもそも契約形態が変わることで、その業務の運営方法が変わります。今まで派遣先からの指揮命令を受けて行っていた業務について実態を変えずに契約形態だけ変更すれば、「偽装請負」の可能性が出てきます。
「偽装請負」とみられるような形態で運営を行っていれば、行政から改善するように是正指導を受けます。指導を受けてから適正な派遣に改善していくことは、その企業だけではなく、取引先企業、労働者、関係者全員に負担がかかることになります。
次に2点目について説明します。
ご説明したいのは、派遣先均等・均衡方式を選択するケースです。
派遣先均等・均衡方式を採用する場合、情報提供の対象となる派遣先の従業員は原則社員であり、やむを得ず有期雇用を比較対象とする場合は、その社員との間で均等・均衡が図られていることが最低条件になっています。仮に社員との均等・均衡が図られていないパートタイマーなどの極端に低い賃金等の情報提供をしている派遣先とその事実を了解した上で待遇を決定し、派遣社員の待遇改善の取組が全くみられないような派遣会社に対しては行政から指導を受けることが予想されます。
なお、契約書に「労使協定方式に限定するか否か」を記載するのも、派遣先均等・均衡方式の実施状況を確認するためといえます。
行政から指導を受けてから適正な派遣先均等・均衡方式に改善していくことは、1点目と同じくその企業だけではなく、取引先企業、労働者、関係者全員に負担がかかることになります。

上記は注意点の一例となります。
まだ走り始めたばかりのこの新派遣制度の実運用を我々も注視していき、クライアント企業への情報提供をしっかりと行っていきたいと思います。