これまで民法第174条1号において、月またはこれより短い時期によって定められた賃金債権の消滅時効期間は、「1年」と定められていました。そして、労働基準法では民法の定めよりも長く、第115条により未払い賃金請求権の消滅時効期間を「2年」と定められていました。
2020年4月に施行された改正民法では、その賃金債権の消滅時効期間を「1年」とする規定が廃止され、債権の消滅時効期間が原則的に「5年」に統一されました。
そうすると、労働基準法の定める「2年」の方が民法の原則よりも短くなってしまいます。
そこで、民法改正に伴って労働基準法も改正され、賃金請求権についても消滅時効期間を変更することが議論され、改正民法と同様に「5年」に延長されました。
ただし、当分の間、現行の労働基準法第 109 条に規定する記録の保存期間に合わせて「3年間」の消滅時効期間とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る一定の労働者保護を図るということになりました。
検討規定として、改正法の施行から5年経過後の施行状況を勘案しつつ、今後検討が加えられることになります。
また、「既に生じている未払賃金についても3年(当面の期間)の時効が適用されるのか」ということについては、改正法の経過措置の一つとして、「施行期日以後に賃金の支払期日が到来する賃金請求権について、新たな消滅時効期間を適用する」とされています。
よって、2020年4月時点から将来に向かって生じる賃金について、3年の消滅時効が適用されることになります。