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職場のハラスメント撲滅月間について

毎年12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です

~いわゆる「自爆営業」についても要注意~

 

 

厚生労働省は、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場環境づくりを進めるため、集中的な広報・啓発を実施しています。

今年は6月に改正労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法が成立し、いわゆる「カスハラ」「就活セクハラ」対策が義務化されることとなりました。また、いわゆる「自爆営業」についても労働法令上問題がありパワーハラスメントが背景にあることが懸念されることから注意喚起が行われていますので、今回はこの問題点について確認しておきましょう。

 

近年、使用者が、労働者に対し、当該労働者の自由な意思に反して自社の商品・サービスを購入させる行為(以下「商品の買取り強要等」という。)が様々な分野で発生しており、問題になっています。そのため、厚生労働省は「商品の買取り強要等」の労働関係法令上の問題点について事例や判例を踏まえ説明し注意喚起を行っています。

 

1.商品の買取り強要等に関連して問題となる事例

ケース: 現実的に達成困難なノルマを設定し、ノルマ未達成の場合には人事上の不利益処分を行うこととしている

問題点: 達成困難なノルマを設定することは、業務命令権の濫用として無効となる可能性があり、無効の場合は、ノルマを前提とした不利益処分も無効となります。

さらに、このようなノルマの達成を指示することは不法行為として損害賠償責任が認められる可能性があります。

労働契約法第3条第5項(権利濫用の禁止の原則)、民法第709条(不法行為による損害賠償)

 

2.商品の買取り強要等の背景にあるパワーハラスメント

労働者が営業ノルマ未達に伴うパワーハラスメントを回避するために仕方なく自由な意思に反して自社の商品・サービスを購入することが懸念されます。そのため、事業主がパワーハラスメントの防止措置を適切に講じることは、商品の買取り強要等をなくすうえでも重要です。

※パワーハラスメント例

・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う

・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う

・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する

 

3.参考となる裁判例

<事案の概要>

専ら飛び込みでの新規顧客開拓業務を1日100件行うよう指示された営業職の事案。

<裁判所の判断>

新規顧客開拓のために訪問件数を目標として掲げること自体が不合理であるとはいえないが、

・目標の達成のためには1件当たり数分で訪問しなければならないこと

・新卒社員が同業務を行う場合の件数は1日4、50件程度であること

・ポストインや門前払いが多くなければ達成できない件数の設定であること

から、当該目標は相当ハードルが高く、当該指示に合理的な理由があるとは認められず、その他の事情をあわせて考慮した上で、当該指示は労働者に対する嫌がらせであり、不法行為を構成すると判断。慰謝料請求が認容された。(大阪地裁 平成27年4月24日判決)

 

出典: 厚生労働省「労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点」.pdf

以 上

執筆者  谷町 ハジメ(ペンネーム)

大学卒業後、服飾雑貨の販売に従事。労務管理に興味を持ち社労士試験に挑戦。
平成16年に社労士資格取得。その後、約20年にわたり、人事・労務管理の業務に携わっている。